「国語に関する世論調査」の所感~ごかい、ごかいよ!ごようだ、ごよう!~
平成30年度の「国語に関する世論調査」の結果が公表された。
文化庁では,国語施策の参考とするため,平成7年度から毎年「国語に関する世論調査」を実施しています。この度,平成30年度に実施した結果がまとまりましたので,発表します。
平成30年度「国語に関する世論調査」の結果について | 文化庁
この「国語に関する世論調査」は、平成7年から毎年実施されている。概要だけだからだろうか、割とゆるい感じの内容で、毎年質問の傾向が変わる[1]上に、そんなに設問も多くない。話のネタにはなるが、リスト化されたデータがないので「使いにくいな」というのが個人的な印象だ。
まあ、それはそれとして「面白いな」と思ったのが、報道のされ方である。
(僕が最初に見たのはNHK NEWSだったが、産経と朝日も似たような報じ方であった。)
「砂をかむよう」5割以上が誤った意味で使用 文化庁調査 | NHKニュース
「憮然(ぶぜん)」は「腹を立てている様子」? 5割超が“誤用” 国語世論調査 - 産経ニュース
「憮然」「砂をかむ」など本来と違う使い方、広がる 国語世論調査:朝日新聞デジタル
何れも 「誤用されている」 と述べているが、調査概要には、これを断言できることは書かれていない。
世論調査の設問は「どのような意味で用いているか?」ではなく、「どのような意味だと思うか?」である。調査でわかるのは、読み手の理解についてであって、書き手の用い方ではない。使用方法に対する理解はそのまま使用状況とイコールになるとは限らない。
読み手の5割が間違っているからと言って、書き手の5割が間違っているというのは、言い過ぎだろう。[2][3]
調査概要から言えるのは、下記の記事内容のようなものだろう。
「憮然」は腹を立てる?=6割誤解、「砂をかむ」も-国語世論調査・文化庁:時事ドットコム
"誤解"の調査であって"誤用"の調査ではない。
これに関して、先の3つの記事は、調査概要を “誤解” しているし “誤用” もしているのではないか?と思う。つまり 「"誤解"について"誤解"して、"誤用"として"誤用"してしまっている」 のではないか、と考えてしまったのが、僕的面白ポイントだったのである。[4]
報道のされ方はおいておいて、調査概要の問の設定にも疑問がある。
「憮然」「砂をかむよう」などの言葉を「どのような意味だと思っているか?」について、実際の問は「AとBのどちらの意味だと思うか?」に対して「A」「B」「AとBどちらも」「AでもBでもない」「わからない」の5択で答える形式になっている。
どちらの意味だと思うか?
憮然(ぶぜん)(例文:憮然として立ち去った)
(ア):失望してぼんやりとしている様子
(イ):腹を立てている様子
(ウ):(ア)と(イ)の両方
(エ):(ア),(イ)とは,全く別の意味
分からない
これ「わからない」人でも、(ア)か(イ)を選択するように誘導されないだろうか。「どちらか?」と問われ、AとBを提示されたら、実際には「わからない」でも"どちらか"を選んでしまうものではないだろうか。
経験的に考えても「憮然」「砂をかむよう」という言葉を使ったことがある人は少ないように思う[5]し、"誤解"以前に、そもそもその言葉を"知らない"人がそこそこいて、それがこの問い方によって"どちらか"に流れ、隠れてしまっていないか、と思う。答えはこの選択式でもよいが問は素直に「どのような意味だと思っているか?」でよかったのではないだろうか。それとも調査は面談形式で行われているため、実際の問い方は少し違ったりするのだろうか?まあ、それはそれで概要のまとめ方に疑問が出るので、なんとなくモヤモヤしてしまう。こういう調査の方法論について明るくないので、確信をもってツッコめないので、余計に。