夢日記20190712_聖母の微笑

今日見た夢の話。割と面白かったのでメモ。[1]
一応注意、主人公≠僕です。[2]
見たまま書いてるので、構成の無駄は勘弁してください。


内容

私はこれまでメーカーで開発業務をしていたのだが、これをやめ、秋からアパレル関係の仕事へと転職した。
服飾や衣服に関して、然程興味があったわけではない。同じ業界にずっといた事で感じていた知識や経験の閉塞感から逃れるために、全く違う仕事をしてみたかったのだ。そして、転職後、望んだ通りの「全く違う仕事だ」ということによって、ものすごく苦しい思いをすることとなった。同じ社会なのだから、流用できる知識もそれなりにあるだろうと考えていたのだが、甘かった。どうやら、業界と業務内容が違うと常識レベルで異なるらしい。いまの仕事では「当たり前」「暗黙の了解」とされていることが全く身に覚えがないのだ。そのせいで、失敗を何度も繰り返すこととなってしまった。おかげで、早速、同僚や上司からは無能のレッテルを遠慮なく貼り付けられることとなった。

職場で煙たがれるようになった私だが、それでも優しくしてくる人が一人だけいた。
彼女は仕事で直接絡む機会は少ないのだが、会う度に私を励ましてくれるのだ。さして関わりのないのに、なぜこうも積極的なのかわからなかった。誰に対してもそうなのかと思えば、どうやら私に対してだけの様だ。正直、私は怪訝に思っていた。彼女は自分に惚れているのだ、と思えるほど、これまでの人生は気楽ものではなかったし、ましてや、この会社での評判は地の底だ。何か裏があるのでは、と疑うのは当然のことだろう。

そんな関係がしばらく続いていたのだが、ある日、私は意を決して彼女の真意を聞いてみようと思った。
「今日の夕方、あそこで待ち合わせましょう。聞きたいことがあるのです。」「はい。待っています。」
だが、そんな日に限って私はまた仕事で失敗してしまった。取引先と交わした契約に不備があったのだ。これを挽回するため、必死に動いた。なんとか落ち着く頃には、彼女との約束の時間を過ぎていた。これからでも急いで待ち合わせ場所にいかなくてはならない。そう思い、その場所へ向かおうとするのだが、事故や揉め事に巻き込まれてどうにもたどり着けない。仕事の失敗は良い、所詮は労働だと思えば我慢できた。だが、これは"私"の失敗だ。これまで蓄積した失敗の苦しみが、個人の小さな約束一つ守れないことにより堰を切ったように押し寄せた。私は待ち合わせすらできない、とんでもない愚図だ!歯を食いしばりながら、涙をこらえ、待ち合わせ場所に向かい走り続けた。

ようやくたどり着いた頃には、もう日はとっくに落ち、終電も近い頃合いであった。
しかし、閑散とした寒空の下、彼女は、まだ、そこにいたのだ。私を、待っていてくれたのだ。
情けないやら申し訳ないやら、悔しさが滲んた顔で私は頭を下げながら、彼女に声をかけた。
「申し訳ない!弁解の余地もない。君を待たせて、悪かった!」
何を言い繕っても私が悪いのは自明だ。もしや、彼女は私の面を引っ叩くために待ち続けたのでは無いだろうか。
そう思っていると、彼女は言った。
「大丈夫ですよ。」
その声につられ、ハッと顔をあげると、私の目に彼女の顔が、飛び込んできた。
美しかった。ただただ、美しかった。
それは微笑であった。全てを受け入れ、受け止めてくれる微笑であった。
「大丈夫。」
彼女はまたそういうと、しょぼくれた私を抱擁してくれたのだ。ああ!もう、どうでも、よい!彼女の意志も、私がどんな人間であろうと、どうでもよい!私は、彼女に、惚れてしまったのだから!もうそんな事は関係ないのだ!彼女に何を聞きたかったのかも忘れて、私は彼女を抱きしめ、言った。
「私と、付き合って下さい。」「ええ、喜んで。」
こうして、私は彼女と付き合うこととなった。

それからと言うもの、私の調子はどんどん良くなっていった。仕事の失敗も減った。これまでの失敗は結局の所その業界のイロハを知らなかっただけで、知ってしまえばどうということもなかったということだ。業務成績も上がり、職場で白い目で見られることもなくなった。ここまで続けられたのも、彼女の支えがあったからだろう。本当に感謝している。しかし、気がかりなのは、私の調子が良くなるにつれて、彼女が微笑むことも少なくなっていったことだ。何か、心配事でもあるのだろうか。
君の願うことなら、出来るだけ叶えてあげたい、そう告げると、彼女は言った。

「もっと、ダメでも、大丈夫だよ?」

あの時と同じ彼女の微笑みが、私の目に写った、ただ、彼女の瞳に映る私の表情は、苦虫を噛んだようだった。


解説と感想

当初の疑惑、「彼女の思惑」とは何であったか、というのを最後に主人公は悟ってしまった。つまり、彼女は、相手がダメであればあるほど、それを全て受け入れるという行為に快感を覚える性癖だったのである。自分を苦しみから解放してくれた聖母は、自分が苦しむことを望んでいたのだ(彼女的には苦しむことを望んでいるのではなく、ダメ野郎であることを望んでいるわけだが)。しかし、主人公がそれで救われたのも事実で、彼女が悪意なく、むしろその純粋性に惹かれてしまっているのだから困ったものだ。惚れた微笑みも、単に興奮でニヤついてただけってのも中々どうしたものか。ドラマティックに告白したのは良かったが、先に関係の本質を見据えておかないと、あとが怖いな、と思いました。


  1. 僕は夢を見るときは割とガッツリ設定込みの夢を見る。頻度はそれほど多くはない。 ↩︎

  2. 夢を見ている時、一人称視点だし、感情移入もしているが、主人公自体は僕ではない。人種、性別、人格、性癖、何れもバラバラだ。今回は、人となりが自分に近かったので、起きた後も感情を少し引きずった。 ↩︎