スリランカ同時多発テロの疑問

2019年4月21日に発生したスリランカでの同時多発テロについて。
テロでは、イースター(復活祭)のタイミングで、教会や高級ホテルなどでキリスト教徒ターゲットに実行された。
テロの実行組織は、スリランカのイスラム過激派組織National Thowheed Jama’ath(NJT)[1]であるとされている。

基礎情報

スリランカは、その人口の内シンハラ人(74.9%)とタミル人(15.3%)が多くを占めている。
イギリスの植民地政策の影響から、この二民族間では対立があり、タミル人の武装組織タミル・イーラム解放トラとスリランカ政府とは30年近い内線状態にあった。また、シンハラ人には仏教徒、タミル人にはヒンドゥー教徒が多いことから、民族と宗教は不可分な形で対立していたようだ。内戦は2009年をもって終結したが、未だシンハラ人による少数派への弾圧など残滓がある状態にある。

スリランカ基礎データ | 外務省

疑問

今回のテロは、イスラム過激派からキリスト教への攻撃であるが、このベクトルが不可解である。
スリランカにおいてはイスラム教もキリスト教も人口の10%に満たない少数派である。過去には、シンハラ人(仏教徒)から、イスラム教への暴動などもあり、成り行きでイスラム教徒が矛を向けるとしたら、仏教徒が対象となるように思う。いくらか調べた限りでは、スリランカでキリスト教からイスラム教へ攻撃があったという情報は見当たらなかったため、やはり違和感がある。

憶測

このテロ自体はスリランカ自体で発生した動きではなく、外部からのエネルギーの注入があったのではないかと思う。それが、外部のイスラム過激派組織であるのか(外の)国家的な勢力なのかは不明だ。しかし、NTJ自体は2012年に設立した新しい組織であることや、規模の小さい(そもそも世界的に見ても名前が知られていない)ことから、今回のような同時多発テロを計画するには自組織だけでは力不足であると思う。計画には、それなりの専門家の知識が必要であろう。

これらはあくまで素人の憶測のため、疑問解消につながる明らかな情報がでてくるのが待たれる。


追記

と、思っていたらISから犯行声明がでたようだ。

Terrorists in Sri Lanka swore allegiance to Abu Bakr al-Baghdadi | FDD’s Long War Journal

動画は、スリランカのテロ容疑者とされるZahran HashimがAbu Bakr al-Baghdadi[2]に忠誠を誓うという内容になっている。

これで、少なくともイスラム過激派の国際ネットワークが関係していることは明らかになったように思う。ただ、そうだとしても、スリランカが対象になった理由は未だに釈然としない。中には、NZテロに対する報復であるとする見方があるが、リアクションとしては脈略の内容に感じる。

さらなる情報を待つ。


  1. National Thowheeth Jama’ath - ウィキペディア ↩︎

  2. ISILの指導者。自称カリフ。アブー・バクル・アル=バグダーディー - Wikipedia ↩︎